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岩井亜咲さん ワルシャワでのインタビュー

   

第18回ショパン国際ピアノコンクール(ワルシャワ ポーランド)本大会に出場された

岩井亜咲さんのインタビューがワルシャワから届きました!

 

(撮影:高坂はる香)

 

—ショパンコンクールのステージに出た瞬間は、どのような気持ちでしたか?

 

これまで何回か他の方の演奏を聴きに来たり、YouTubeの配信を観たりしていたので、ステージに出る時の流れはなんとなくわかっていたつもりなのですが、プログラムと名前が読み上げられたら思ったよりすぐに拍手が始まってしまって。気持ちを整えるまえに「プリーズ!」と舞台に出るよう促されてしまって。鼓動も高まり、ステージに上がる数段の階段も長く感じました。気持ちを整えるために、ゆっくり時間をかけて登ってしまいました。

 

—確かに客席で見ていて、なかなか出てこないなと思いました(笑)

 

そうなんですよ。ステージに出てからの段差も、転んだりするかもしれないのでゆっくり歩いていきました。弾く前にそこが気になってしまって。あそこを走って出てくる方は、すごいなと思います(笑)。

 

—演奏してみて、いかがでしたか?

 

ステージで弾いていると、ちゃんとピアノが鳴っているのかわからなくて、もっと一生懸命力を入れた方がいいのか、力を抜いた方がいいのか考えながら弾いていました。あっという間でしたね。

もっとピアノを鳴らすことができたかもしれないなど、部分的な反省はあります。でも、小さな枠の中かもしれませんが、自分がやりたかった音楽はできました。今後の課題を得られたという意味では、多くのものを持ち帰ることができます。

 

—出発前には、コピスみよしで壮行演奏会もあったそうですね。

 

そうなんです、急遽開催してくださって、とてもいい経験になりました。

 

—コンクール1年の延期により準備期間が長くなりましたが、その間、ショパンに対して新たに気づいたことや感情の変化はありましたか?

 

最初は、弾くということばかりに意識がいっていました。予備予選に出場できると決まった時にもまだ実感がわかなくて。まだ、ショパンの本当の音楽をわかろうとすらしていなかったのかもしれません。

でもこの7月にワルシャワの予備予選で演奏して、それからの短期間で、彼の繊細だけれど信念のある筋の通った性格が、自分の中ではっきりしてくるところがありました。勝手にわかってきたと感じているだけかもしませんが、それに伴って、あまり迷う必要はないと感じられるようになりました。

ショパンの人生の喜怒哀楽が、楽譜や資料に多少なりとも残されていて、それを私はただ素直に読み取って出していくだけ、余計なことは加えなくていい、表現しなくていいんだと思うようになりました。シンプルに吸収して、素直に表現するといいますか。それが正解かはわかりませんが、自分の中で筋が通っていればいいんだと。

そう思えるようになったのは最近のことです。

 

—勉強して、考えて、練習してきたあと、最後ここにきてすっと霧が晴れたような。

 

そうですね。予備予選で演奏したこと自体がいい経験でした。そこから大きく演奏が変わったわけではないかもしれませんが、自分の中では感じ方が変わりました。

さらにいうと、今回は演奏順が5日目の最終日で、出番まで待ち時間が長かったなか、3日目くらいに気持ちのピークのようなものがきて、聖十字架教会にいってもどこにいても泣けてくる、みたいなときがあったのです。ショパンと向き合えている気がしたとか、そんなかっこいいことではなくて、多分緊張と不安がピークに達していたからだと思うのですが…。でも後半になって、その山をちょっと越えたことで、本番は落ち着いた状態で臨むことができました。そのピークの時に本番だったら、心も音楽も調整できないままだったかもしれません!

ショパンコンクールの舞台に立てた、それだけでも、成長できたと感じています。人生においてすごく大きなステップアップになりました。

(取材・文: 高坂はる香)

 

 

コンクールでの演奏は、大会公式YouTubeチャンネルでご覧いただけます。